5/15/2015

AMラジオの素晴らしさ(じっちゃんと共に綴った歴史)

[AMラジオの素晴らしさ]

実は、私はその素晴らしさの点においては、特にこれといった印象を持っていません。え?いまさら?ってところなのでしょうけど、なんやかんや言っても

「ハマっちゃったんだから良いじゃん」

終了~~~~

いや、ブログって本当に簡単ですね。では皆さん、また次回お会いしましょう。




と言うやる気の無さをアピールするくらいに、AMラジオの素晴らしさについては実感してない私だったりします。ではどうして、ラジオならまだしも、トランスミッター側への興味があるのか、と言う点で、実はトランスミッターについても、あまり確たる「素晴らしさ」を感じていないのです(←前振りが長いぞ!)。では何故か?と言う点で考えてみますと、そもそも私はAMラジオで配信されているコンテンツ、つまり「好きなラジオ番組」と言う物はありません。番組で言ったら寧ろ、FMラジオ媒体のほうにはあります。リアルタイムで聴いた事はありませんが、ウルフマンジャック!。刑事コロンボを更にクールにしたような言い回しと、彼の持つフィーリング(ジャンルに囚われないぜ、と言いながら結構偏っている可愛いところとか^-^)は好きですね。

で、それじゃあどうして、好きな番組も無いAMラジオ媒体に固執するのかですが、「好きな番組が無い」と言うのは実質的には嘘になりまして、私の実家(コロラド)に居た頃の話になります。

[海賊放送局]

かなりローカルですので、現在、ネット上にこの放送局の情報を見つける事は出来ません。しかし、今から12年くらい前の話。私がまだ10歳かその付近だった時に、私のじっちゃんが、その海賊放送局をよく聴いていたのです。

送信周波数は1290KHz。
出力は、恐らくですが50W(PEP)程度(ステーションコールの際に、機械音声で流れていた)

内容は、1930s~1960s付近の音楽を、夕刻16:00~24:00まで、週末のみの放送でした。じっちゃんの聴いていたこの放送局の音を聴いて育ったような物なのです。つまり、そこには、単なる海賊放送局ってだけではなく、じっちゃんと、ハーブティーを飲みながらばっちゃんが焼いてくれたバターパイに舌つづみしつつ、ボードゲームで遊んだ、といった一連の出来事がセットになって、私の脳裏に焼き付いています。現在、私のじっちゃんは102歳で、元気かどうかは微妙ですが、現役で農園を管理しています。

そんな海賊放送局、一切MCやDJなど、人の喋りが無い放送局で、見事なくらいのフェードイン、フェードアウトでのノンストップオールディーズ放送。それゆえに詳細は不明でした。50Wと言うのも本当かは分かりません。どこから送信されているのかを、じっちゃんは色々と探したそうですが、結局のところ現在に至るまで分かってません。放送は、今から8年前くらいには無くなっていたようです。地元のレストランでも、この放送局が店内に流されている時もありましたくらい、そこそこ知名度が有ったのかな、とは思いますが、誰もこの放送局の詳細は分かりませんでした。ただ、Pirates Radio、という機械音声が入っていた事から、海賊放送局だった事は間違いないようです。「Here we are in 1290 the Pirates Radio」と言う、女性なのか男性なのかよく分かんないトーンの機械音声が、その日の放送終了時に流されて、電波が停止される、と言った週末を、じっちゃんは楽しみに過ごしていたのです。私にとっては、単なる背景音に過ぎなかったのですが、少なくともあの感じを味わえる放送局は、現在では、特に民間、国営含めて存在しません。そりゃあ、商業ベースですからね。

じっちゃんの100歳誕生日を迎える前に、私にボソっと呟いた言葉、「俺の100歳の誕生日を1290が祝ってくれやしねぇかな。プリシラハリスなんぞでさ」。この言葉を、自身がコレクションしているアンティークラジオを撫でながら私に言ったのです。じっちゃんっ子な私ですから、それに応えようと暫くは1290を探し回ったのです。勿論Forumなどでも然り。しかし、そもそも知っている人が皆無。そんな放送局なんて存在しなかった、と言わんばかりに、その痕跡を消し、私とじっちゃんの心の中にだけ記録が残っているような寂しさを感じたのです。

海賊放送局と言うのは、法律で定められている微弱電波の範囲を超えて運営されている放送局の事で、それは勿論、電波出力、送信可能周波数以外、などなど、違法なのです。ただ、そんな海賊放送と言うものは、かつてはひとつの時代の象徴としての流行を担ったのです。本当に海賊的な放送局としては、プロパガンダを流したり、専らの政治的背景が元となった放送局を言うのでしょうけれど、じっちゃんや私にとって1290は、故郷の匂いそのままなのです。

そこで思いついたのは、1290にはなれないけど、それを再現する事は出来るね、という部分でした。送信機があれば、じっちゃんのアンティークラジオからは、今現代の商業放送局とは違い、自分の好む音を鳴らす事が出来るではないか!。という思いから、私がじっちゃんへと、AMラジオ送信機を作り、プレゼントしたわけです。単純に音を乗せるだけではなく、俗に言うOPTIMODプロセッサーを通したような位相制御回路と、独特のパンチのあるサウンドに、クリッパーによる歪回路(リミッターの付加効果)なども搭載した木箱送信機でした。



この写真は、最終的な仕上がりではない時の物(本当の仕上がりは母体の色をダークブラウンに塗ったり、じっちゃんのネームプレートを付けたりしました)ですが、メーターを含めた光を発する部分には、フィラメントタイプの本物の電球を使用したり、アンティークラジオと並べて置いても違和感の無い感じにしました。フィラメント式の部品は、寿命の心配がありましたので、12V電球には8V程度を供給したりと、延命処置を施してます。

喜んでくれました。勿論、孫娘である私からのプレゼントってのも有ったのでしょうけどね。現在も尚、自分の好きな音楽レコードをこれに通した音で楽しんでいる様子。周波数は1290KHzではありませんが、ほぽ24時間つけっぱなしだそうです(笑)^-^。

このように、私にとってはAMラジオと言うものは、言うなればじっちゃんとの思い出を語るに外せない要素の一つになっています。決して音楽を聴くには役不足な媒体ではありますが、このAMラジオ、つまりは振幅変調された音楽と言うものは、実際に振幅変調を行わないことには得られない音なのです。AM風の音を作り出すエフェクターも存在しますけれど、やはり、聴き比べると全くと言っていいほど違います。つまり、世界中のAMラジオの音、なおかつ、100年前から基本的な技術は変わっていない中で、そのように長い期間、世代を超えて音を運んできた媒体なわけです。他の方々は、かつて聴いていたラジオトーク番組などに懐かしさを感じるなどがありますでしょうが、私は、じっちやんとの思い出における、海賊放送局ではありましたが、歴史の中に刻み込んでくれた良き要素、それゆえに、ハマってしまったのでしょうね。

よく、フォーラムなどで尋ねられるのは、「FMのほうがもっと飛ぶよ」「FMのほうが音いいじゃん」。分かってます。とてもよく分かってます。しかし、もし、かつてその海賊放送局がFMだったとしたら、恐らくは脳内に然程残ってなかったと思います。だってFMって音質的にはCDなどと、パッと聴いた感じは分からないじゃないですか。ありふれた音ってわけです。とはいっても、OPTIMODを所持するに至った背景には、FM独特のサウンドが好きだから、ってのも有るかもですが^-^。ウルフマンとかね。

その延長上で、色々と枝分かれしつつ、技術面での更なる興味となっております。