8/06/2017

遅延回路(スピーカー、メーター保護)


電源を入れた時に、時としてアンプなどでは「ボンっ」とか大きな音が鳴ってしまう場合があります。市販のオーディオアンプでは、電源を入れると数秒後に内部から「カチッ」て音が聞こえるのを耳にされた事があると思います。あれはスピーカーとアンプ回路との間の接続を、アンプ出力が初期状態へと安定するまで切断しておくリレー回路であります。

最近はその突入電流自体をそもそも防止済みのチップを使用している物もありますが、今回は色々と応用が利く回路を作ってみましょう。

基本としてはトランジスターを使ったこのような回路でも良いのですが、私はお奨めしません。上記の回路では若干動作が不安定で、これを改良される場合、初段Trの後にもう一段付け加え(ダーリントン)るか、そもそもTrをスイッチングに特化した物を探してそれを使って作るのが宜しいと思うわけです。

で今回は、確実でハキハキした遅延回路を考えて見ましょう。



VCCを5Vにすれば、5Vリレーを使う事も可能です。

もう御覧になって、なるほどと思われた方も多いと思います。358を通常の増幅回路として見ている方は「なんじゃこりゃ」になりますが、比較器、つまりはコンパレーターとして見ますと分かりやすいでしょう。もちろん、この定数のまま、コンパレーターと銘打つLM339, LM393を使用されてもOKです(LM339はピン配置が通常のオペアンプと違ってますのでご注意)。

[動作]

電源が供給されると、LM358の2番ピンには、12Vの100K:100Kの分圧された6Vが加わります。次に、RcgとCcgの時定数回路により数秒後に3番ピンの電圧が6V以上に達します。2番ピンに供給されている6Vが基準になり、その基準電圧より大きい電圧が3番ピンに入ってきたら出力がHになる、という動作です。3番ピンにかかる電圧を電源投入時から時定数回路によって遅延させる事で、時間差回路を構成しています。この2番ピンと3番ピンの電圧差により、1番ピンがHになるかLになるかが決まります。2番ピンはマイナス側の基準、つまりは低い電圧側の基準。3番ピンはプラス側の基準、つまりは高い電圧側の基準となり、上記の回路では3番ピンに2番ピンより高い電圧が加わった際に、1番ピンがH、今回は6Vが出力されます。論理回路とは若干違いますので、5V基準と言うわけではありませんが。そして、Drfダイオードは電源がOFFになった際にCcgに充電された電荷を放電する為に入ります。このDrfダイオードが無い場合、電源がOFFになってもCcgに充電された電荷がなかなか放電されず、電源をOFFにして間もない状態で再度ONにすると、完全にCcgが放電しきっていませんので遅延時間が短くなったりと、不安定な動作をしますので必ず入れましょう。

簡単な応用としましては、100K:100Kでは1:1で、VCCの1/2になります。もし100K:10Kならば10:1の比率で分圧され、それが低い側の電圧となります。

因みに時定数の計算方法はちょっと複雑になりますので、計算サイトを活用します。

さて、数秒後に1番ピンにHである6Vの電圧が出力された後は、今回使用したLM358ならば1KΩ程度で電流制限した状態でLEDが光らせます。上記回路ではそのままリレーを動作させるドライブ回路を1Trで組んでおります。Trのベースに入ってきた6Vによって、コレクター、エミッター間が接続状態になります。つまり、スイッチとしての働きですわね。その経路にリレーの駆動コイル端子を配置すれば、後はリレーの制御先としてリレーの仕様範囲内で色々な負荷を制御できます。スピーカー保護に使う場合は、2回路入りのリレーを使って、アンプ出力⇔スピーカーの間に配置する事で、電源投入から数秒後に、スピーカーとの接続をさせる、と言った使い方が出来ます。
こんな感じで^o^。


[CMOSロジック版]

初歩の初歩ではありますが、CMOSの4000番台を使うと言うコメントを頂きましたので、そちらも組んで見ましょう。基本的にはAND GATE、OR GATEがあればもっとスマートに出来ますが、在庫切らしていましたので、NOR GATEにて代用しました。

もう中学校で習うレベルの基本中の基本ではありますが、ロジックICとは言え、回路的にはこれはアナログ回路の内に入ります。TC4001BP, CD4001BMP、HD14001など、4001ロジックを使いましょう。NOR GATE(Not OR)ですので、出力論理値は反転になります。つまり本来、出力がHになるはずがLになり、LになるはずがHになる、と言う反転出力になります。NORは、入力ピンのどちらか、又は両方がHになれば出力がHになると言う基本的な論理回路であります。今回、手持ちの都合でNORになりましたが、1ピン2ピンのどちらかがHになれば、3ピンはLになります。今回は1ピンの方を使い、その1ピンがHになるまでの時間を時定数回路によって遅延させています。1ピンがHになれば出力3ピンがLになります。LとはつまりOFFの状態ですので、それを反転させてHを取り出しています。まあ、ロジックブロックを2つ消費しますけど、どのみち4ブロック入ってますので^^。後の回路はコンパレーター回路と同等ですが、4001からの駆動負荷を考慮して、2.2KΩに気持ち的アップしていますが、別に1KΩでもOKであります。LEDは確認用ですので実使用では不要でありますわね。

実際の動作はこんな感じ。